世界の労働時間ランキング‐日本は世界で22位と労働時間はそれほど長くない?

世界の労働時間ランキング‐日本は世界で22位と労働時間はそれほど長くない?

日本の労働時間は長いと言われていますが、世界と比較してどうなのでしょうか。2017年の労働時間を国別に比較したOECD(経済開発協力機構)による調査結果をもとに世界の1年間の労働時間のランキングを見ていきましょう。

せかいのなんでもランキング

世界の労働時間 国別ランキング

順位国名時間(h)/年
1メキシコ2257
2コスタリカ2179
3韓国2024
4ギリシャ2018
5ロシア1980
6チリ1954
7ポーランド1895
8イスラエル1885
9ラトビア1875
10ポルトガル1863
11アイスランド1858
12エストニア1857
13リトアニア1844
14トルコ1832
15米国1780
16チェコ1776
17ニュージーランド1753
18ハンガリー1740
19アイルランド1738
20イタリア1723
21スロバキア1714
22日本1710
23カナダ1695
24スペイン1687
25イギリス1681
26オーストラリア1676
27スロベニア1655
28フィンランド1628
29オーストリア1613
30スウェーデン1609
31スイス1570
32ベルギー1546
33ルクセンブルク1518
34フランス1514
35オランダ1433
36ノルウェー1419
37デンマーク1408
38ドイツ1356

ランキングの細かなデータの内訳概要は以下の通りです。

・世界主要国の労働時間、国際比較統計のランキング
・単位は時間(h)/年
・OECDの2017年の統計を利用
・各国の全就業者の平均年間実労働時間(パートタイムを含む)
・就業者とは雇用者(給与所得者)、自営業者を含む
・労働時間は原則として定時、残業、有給、無給にかかわらず実際に生産活動をしていた時間
・休暇・有給休暇、昼食時間、OJT以外のトレーニング時間は含まず

日本は22位と意外と低い

日本のランキングは世界と比較しても38か国中22位とそれほど高い訳ではありません。2011年では一日の平均労働時間のランキングではメキシコに次いで2位でしたから、日本の働く労働時間は改善されているとデータ上は言えるのかもしれません。

しかし、これが本当かどうかは怪しいと個人的には思います。日本は「サービス残業」という文化や「みなし残業」という制度があるためです。

日本の大企業での働き方

私はそこそこ大きめの保険会社で7年間働き、支社で営業職、本社では事務職を経験しました。入社した当時、営業職だった頃はみなし残業が適用されていたため、長く働こうが短く働こうが給与は変わりません。

基本的に総合職は長く働く傾向があり、私も一日に8時~21時までが基本的な労働時間の長さでしたが、その労働時間を会社がすべて管理できない状態だと言っても過言ではありません。

なぜなら、後に本社勤務として分かったのですが、人事部門が管理しているのはPCの起動時間とシャットダウン時間しか分からないからです。

休日出勤も一年間で見ると月平均2~3回、一日4~5時間程度は行っていました。しかし、会社としては休日出勤はカウントされていないのでこれは労働時間にもちろん含まれていません。

振替制度もあり、お客さん対応で仕方なく土日にでなければいけない日は出勤が許され、年に3日ほど振替休暇が追加されますが、消化したことはなかったです。この場合はカウントされていますが、実態の勤務時間より短くカウントされています。

一方、本社事務の仕事はPCがメインなので厳しく管理されます。30分単位で労働が管理されますが、始業時間は一律9時スタートなので朝早く来れば、労働時間を長くすることも可能です。当時、私が働いていた保険会社では19:30シャットダウンが基本でしたが、申請すれば21:00まで働くことができます。

しかし、裏技的なことを使えばいくらでも調整は可能ですが、営業職の時よりははるかに労働時間は短かったです。それでも過去に比べれば改善されてたと当時の上司から言われたこともありました。

つまり、何が言いたいかというと会社が管理できていないサービス残業が多く存在するということです。これは日本の大企業の営業職や本社の事務職で多くある傾向だと考えてよいでしょう。

大企業で働いている友人も大抵このような働き方です。

日本はデータ以上に労働時間が長い可能性は高い

まあ、これは過去の話しで、今は政府が提言している「働き方改革」の方向に大企業は進もうとしているので、以前よりも労働時間は改善はしているハズです。しかし、大企業が政府に提出する労働時間のデータが実際よりも少ないと考える方が妥当です。

大阪の小さな広告代理店で働いたこともありますが、この企業もみなし残業の制度でした。

10人以上の企業は36協定がないといけませんが、ここは10人未満の小さな会社です。つまり、小さな会社はそれほど残業について気にする必要はありませんから、労働時間を正確に把握している方が少ないでしょう。

労働時間が多すぎなければ、監督省庁に指摘されないので、そうならないように気を付けていたら良いのです。

政府もバカではないので、そんな小さな会社のデータをあてにはしていないでしょうから、中小企業ではみなし残業が適用されていない「労働時間=賃金」に直結するような会社のデータをOECDに提出している可能性が高いです。そういった会社は残業が少ないことが想定されます。

OECDのデータは無給で実際に生産活動をしていた時間も含まれるとありますが、サービス残業はここに含まれていないと考える方が妥当です。企業がこれを把握して、政府に報告するメリットがまったくないからです。

おそらく、無給でも実際に生産活動をしていた時間とはボランティア活動などを指していると思われます。

日本は祝日が多い国

ここまでざっと、日本のデータは疑わしいということを述べてきましたが、日本の労働時間が22位であることの妥当性についても書いておきたいと思います。

世界的に見れば、日本はゴールデンウイークもあり、シルバーウイークがある年もあります。有給が取りにくい会社も多いのですが、祝日の数は世界と比較しても多いです。そのため、実際に感じる労働時間より一日の労働時間を長く感じている可能性も否定できません。

しかも、たいていの会社が週休2日制度を導入しているので、休日の数は恵まれていると考えてよいでしょう。そこにワークライフバランスが注目されるようになったため、労働時間が改善されているという見方もできます。

まとめ

メキシコの労働時間はこの調査を開始して以来ずっと上位をキープしていますし、ここ3年ではずっと1位です。時間にルーズな面が指摘されることもありますが、日本人よりはるかに働き者だということが言えます。

OECD加盟国の中でメキシコは最も賃金が安い国です。そのため、長く働いてお金を稼がなければいけないとうい実態もありま、アメリカに出稼ぎをする人も多く、週6日・1日10時間以上働いている人も珍しくはありません。

基本的にアジア圏は欧米に比べて労働時間は長いです。OECDに加盟していない中国はこのランキングに入っていませんが、他のデータでは日本よりも長く働いているとうい結果もあるくらいです。

また、韓国では競争社会も激しく、長時間労働が形骸化している点では日本に似ているかもしれませ。しかし、日本以上に働く時間が長いことはあまり知られていません。彼らもまた長時間労働を問題視している人も多いです。

一方で、このランキングで最も労働時間の低いドイツはかなり効率的に稼いでいる国です。人口も多いのに平均労働時間が短いのはかなり優秀だと思います。ドイツの場合は、学校のシステムがそもそも効率的に経済に絡む仕組みになっています。

個人的には欧米のように効率的に働く企業文化が根付いて、「仕事のために生きる」のではなく「生きるために仕事をする」という意識が日本人に広がり、より幸福感を持てる社会になれるようになれることを期待しています。